慢性の「膵負荷状態」の中に「軽症慢性膵炎」が存在すると考えられます。
EUS(超音波内視鏡診断装置)上、膵臓そのものに軽微な変化が見られる場合、「軽症慢性膵炎」と診断されていますが、この状態は「膵負荷状態」の中でもある程度進行したケースと判断されます。しかし、このような症例の軽微な変化がEUSでしか確認されていない状況は、膵臓そのものを見つめても早期・軽症の「膵負荷状態」の診断が困難であることの証明でもあります。まして、一般に活用されている対外式超音波診断装置やCT・MRI等による“膵臓そのものの軽微な変化の診断”には限界があることは言うまでもありません。但し、個々の症例に直に接して実施される超音波検査を用い、“膵臓以外の変化”を見つけて行けば、更に軽微な「膵負荷状態」を推定することが可能となるかもしれません(超音波診断の活用をもう少し見つめ直すべきです)。
生化学検査上の膵臓に関連した「正常値」は、臨床症状等による診断や正確な画像診断の上に成り立つものですので、診断をより正確なもの近づけることが出来れば、正常値の解釈にも変化が生じることになります。そして、様々な視点での診断法を駆使し、更に早い段階から「膵負荷状態」を捉えることが出来れば、問題点(自覚症状や難渋する診断等)の多くは解消されて行くでしょうし、万が一「軽症慢性膵炎」状態にある方でもその後の進行を食い止めることが可能となる筈です。
生きる為・成長する為に膵臓は常に食べ物の負荷にさらされていますが、適正な食事内容下では「膵負荷状態」は発生しません。肉体的・精神的に限界を越えた状況での消化能力を上回る不適切な食事負荷が「膵負荷状態」を生み、様々な形の“警告”を発します。警告はお腹だけとは限りません。空気に触れている部分(皮膚・喉・気道・消化管等)はせめぎ合いの場所となることが多く、これに負けると各専門領域の“病気”やアレルギー症状等につながって行きます。また、限られた狭い空間や負荷が加わり易い部分(眼・耳・脳・心臓・関節・前立腺等)・体質的に弱い部分も警告の発生場所になります。「膵負荷状態」に気付かなかったり、無視したままだと、膵臓そのものの警告(膵炎・糖尿病・膵癌等)に発展して行きます。
個々ケースの“今”を知る為の「診断」は必要かもしれませんが、ご自分の身体(お腹・心)の限界を知り、「膵負荷状態」を発生させない努力の方がもっと大切であると考えます。
生きて行く中、如何に健康を保ち続けるかのポイントをうまく見つけてくれる導き手が「膵臓」であるような気がしてなりません。死ぬまで(安易に死を選んではいけませんので)付き合って行くべきでしょう。